Doctor

Director

主任部長 土師 陽一郎

Dr. Yoichiro Haji

まだ見ぬ「正解」に近づくため
医師の探求心を刺激しあう

Chapter01

地域医療も患者さんも、
俯瞰的かつ多角的、焦点的にみる

 「省察」。
 17世紀、合理主義哲学の祖であるデカルトは、真理を求めるのにまず自らを省みてすべてを疑い、その善悪・是非を問い直しました。総合内科の診断と教育でわたしたちが大事にしているのも、この「省察」です。
 無用なプライドを捨て、最初に疑った病名に固執することなく、柔らかく、俯瞰したり細部に寄ったりしながら診断していきます。目の前の患者さんに起こっていることを、過去の経験や知見によって統合し、典型的な症状とそうでない特殊なことを振り分けながら、一つひとつの整合性を問い、本当にその病気なのか見極めていくプロセスは、常に新しい気付きをもたらしてくれます。
 21世紀のこの時代にいまだ教科書も存在せず、AIに任せてしまうのも心許ない。それでいて、医学の根幹に通じる領域でもあり、探求の醍醐味は尽きません。ときには大胆な仮説も必要であり、それを可能にするのは、アブダクティブでアナロジカルな、人間ならではのしなやかさなのではないかと思います。
 診療科の垣根を越えて医師同士が協力し、それが困っている患者さんの問題解決につながる仕組みをつくりたい、一緒に高めあえる仲間を育てよう。そう考えて結成したのが、いまの大同病院の総合内科です。
 当科は、膠原病・リウマチ内科医が中心となり、院内の専門診療科や地域の内科の先生方のところで、なかなか原因を突き止められなかった不明熱などについて、その原因検索をお手伝いしています。
 これを、ぜひ地域に広げていきたい。わたしたちは、単一の病院という境界をまたぎ、時に鳥となり虫となる総合内科の「眼」です。「なんだかよくわからない」ことを気軽に相談していただき、専門科の先生方が専門診療に集中できるようにサポートします。内科プライマリケアの先生方がともに研鑽を積めるような、地域に開かれた場にできたら、と思っています。

Chapter02

膠原病から感染症まで
全身を見る高度医療をめざす

 第32代アメリカ大統領フランクリン・ルーズベルトの妻エレノアは、再生不良性貧血と粟粒結核で長年の闘病の末にこの世を去りました。貧血の治療として副腎皮質ホルモンが投与されてはいましたが、結核の治療薬が投与されたのは死のわずか1カ月前でした。結核は髄膜、胸膜、肝臓、腎臓、リンパ節などあらゆるところに菌の巣食う全身病でもあります。20世紀前半、生命を脅かすものは結核と梅毒でしたが、すっかり治療法が確立されてもなお、臓器別の専門家が衆を頼んで調べても、見逃されがちであることは、今も変わりません。
 膠原病や感染症の診断は、臓器別の専門性がますます高まる現代内科学において、盲点となりがちです。そのために「全身を診る」ことを専門にするわたしたちのような診療科が存在します。膠原病・リウマチ内科としてスタートしたチームは今後、血液培養陽性の患者さんのモニタリングや、AST(抗菌薬適正使用支援)などに積極的に取り組むなど、臨床感染症への対応力をより一層高めていきたいと考えています。

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